科学、本、映画の魅力をつぶやく ph-ガリレオ

科学、映画、本を紹介するブログです

逆ソクラテス

伊坂幸太郎さんの作品の『逆ソクラテス』は、小学生の様々な人間模様が描かれています。


小学生時の教員との関係、クラブ、クラスメイトとのやり取り、いじめ問題などリアルにしかし、後味良く描かれています。


そんな中で、「いじめ」はなぜいけないのか?というテーマが作品の中に何回も登場します。


道徳の授業でも取り上げられる題材で、なぜいけないかの説明はたくさんあります。


そんな中で、伊坂幸太郎さんのいじめは何故いけないかの理由は、今の世に通じる説得力ある一つの説明であると感じました。以下、要約します


いじめられた側は、やられた事、された相手の事をいつまでも覚えている。将来、大人になった時に、いじめた側が幸福で成功している姿を見れば、いじめられた側はそれを妬み壊したくなるかもしれない。


いじめられた人が、将来の仕事の取引先の相手、結婚相手の親戚、救急病院の医者である可能性もある。そんな時に、昔にいじめられた経験を思い出し、仕返しをされることもあり得なくはない。


人生は山あり谷ありで、いつの世でも生きていくのは誰にとっても大変なこと。


そんな時に、いじめや相手が嫌がることを平気でする人は、周囲に疎まれ、周囲からの信頼を無くしたまま、将来生きていくことになる。つまり、自分の人生を自ら生きにくくする。


そして、今はSNSなどインターネットの発展によって、いじめた相手をいつまでも、どこまでも追跡することができる。つまり、いじめた側が一番幸福で成功している時期に、復讐されることもなくはない。


こういう内容を、短編の作品の中で説得力が増すように、ストーリーに織り込みながら展開されていきます。


これを読むと、いじめや人が嫌がることを平気ですることが、どれだけリスクが高く、自分の首を締めることになるかがよく分かります。


この短編を読み、心に残ることがたくさんあると思います。是非、若い世代の人にも読んでもらいたい作品です。


逆ソクラテス (集英社文芸単行本)

逆ソクラテス (集英社文芸単行本)