科学、本、映画の魅力をつぶやく ph-ガリレオ

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ハマグリが作る蜃気楼

 以前に紹介した『AnotherエピソードS』で蜃気楼について触れました。


 小説の本文でも、蜃気楼について書かれているシーンがあります。


 ちなみに、蜃気楼の語源は幾つかあります。その一つは、


「蜃」は巨大ハマグリの妖怪で、それが気を吐きます。その気が「楼閣(立派な塔)」の幻影を見せることからこの名が付いたという説があります。


 さて、蜃気楼には大きく二種類あって、上位蜃気楼と下位蜃気楼があります。


 上位蜃気楼は、海の上で、船が上下逆さまになって上空に映るもの。下の物が上に映るから上位蜃気楼と呼ばれます。


 下位蜃気楼は、夏場の「逃げ水」のように上空の景色が地面に逆さまに映るもの。下の物が上に映るから下位蜃気楼と呼ばれます。


 原因は温度差にあります。空気の温度差によって光が曲がる=屈折するのです。


 春は、海面付近の温度が低く、上空が暖かくなります。それにより、海面付近にある船から出た光が上空に飛び、暖かい空気で屈折し、ある所で全反射します。(上に凸の放物線のような軌道)それが目に入り、上下逆さまに見えます。(上位蜃気楼が見える)


 冬は、海面付近の温度が高く、上空が冷たくなります。それにより、先程とは光の進み方が逆になります。(下に凸の放物線のような軌道)その結果、上にある物体から出た光が海面付近(実物の下)に見えることになります。


 この軽い説明が小説にあり、最後のオチに関係させる所が、綾辻さんの技量の高さでしょうか。


 小説自体と、科学知識が身に付く面白い小説でした。


Another エピソードS (角川文庫)

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